イノウエさん 好奇心 blog

井上慶太郎の学術系スナップショット。月1予定。

続・社会学入門

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 先月は、岩波新書赤版『社会学入門』の、第1章・第2章に触れさせていただきました。
 今回は、しばらく個人的には難解に感じていた序章と巻末の部分に踏み込みます。

 社会学ならではの、ドイツ語の耳慣れない用語も多々出てくるのですが、関連する問題意識をすでにお持ちの方であれば、理解は難しくありませんし、問題意識が無くても、予備知識を書き出したので、参考にして頂ければ、本書を読んでも難しくはないかと思います。
 見田氏のいうところの、社会構造の4つの形態についても共有できるものがあるかと思い、ブログに記しておきました。
 
 ちなみに、本書での論旨は1728年に生まれたカントの純粋理性批判で示された先験的な、直観のセンスの論旨にも通じており、社会学の分野でありながら哲学史の文脈上にも据えられる内容です。
 というわけで、このブログでは、18世紀のドイツ哲学を現代哲学へ通じさせるには、ちょうど良く、中でも、好きな人にはたまらない論旨を扱えそうです。この祝いブログに読んで頂いた方が立ち会えることを嬉しく思います。
 どうぞ最後までお付き合いください。祝🌟

 では、はじめに質問ですが、ゲマインシャフト、とは何だか解りますか?

 初めて耳にした人の為に、独社会学者、フェルデナンド・テンニース(1855~1936)の提唱した強力な社会形態の分類用語をお知らせします。それが、ゲマインシャフトと、その対概念となるゲゼルシャフトです。これを前もって確認します。

ゲマインシャフト:地縁・血縁・友情で結びつく社会(非打算的…テンニースのいう本質意思による社会)
ゲゼルシャフト :共同体の利害調整のため、人々が構築した社会(実利的…テンニースのいう選択意思による社会)

 を意味する言葉です。さらっと頭に入れてください。

 ところで、この分類は社会学の歴史の中で、かなりの説得力を持ちました。例えば、現代風な観点にも応用できるからです。
 ゲゼルシャフトの社会では、利害調整のために人々は社会を設計をします。なので、この社会での、あらゆる文化は、明確に価値の判断できる対象を基準にしやすいです。例えば、生活に困窮する人へ、政府は生活保障として、ポエムを読み聞かせる、などのことは普通はしませんが、そういう訳です。

ここで問題
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 もし、あなたが、まだあまり親しくはない異性に確実に喜んでもらえるプレゼントを選ぶとしたら、下記のどちらを選びますか?理由も答えてください。

 1.月夜の晩に浜辺で拾って捨てられず持ち帰った心にしみるボタン
 2.ディズニーランドのペアチケット

解答
普通は2番が選ばれます。
理由は、既に一定の価値を認めてもらえる物の方が、喜んでもらいやすいからです。
(2番は選択意思から選ばれるのでゲゼルシャフト社会の特徴です)
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 一方、例えば月夜のボタンやポエムなど、人によって価値の分かれるものを誰かに提供する場合は、動機としては実利的というよりも、見返りを意図しない自発に近い動機になるのは自明です。
 この自発性は、より友達的で、非合理的で、結局は無作為なものなので、縁や友情に関わるゲマインシャフトの社会の振る舞いになります。


 この二分類を表明した当時のテンニースの論旨は影響力を持ちましたが、実は、げんだいでは批判の対象にもなりました。
 岩波文庫から翻訳本を著した杉之原さんでさえ、「社会的事象を社会構造の変化及びその規定因素との関連において把握するということがほとんど顧慮されていない」と言います。(吉田浩、2003『フェルデナンド・テンニエス』、東信堂

 なぜだと思いますか?

(6/20updated)
 というのも、テンニースはゲマインシャフトゲゼルシャフトの二つの領域を、さらに、生理的なものと、経験的なものと、思考的なものの、3段階の区分けを設けて、詳細な分類を試みました。添付画像にあるように、生理的な段階では、男性はゲゼルシャフト的・女性はゲマインシャフト的で、思考的な段階では、それぞれ、庶民的・教養的だと示すような部分などがあり、批判されやすい論旨を含んでいたのも、批判の一つだと思われます。
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 というわけで、↑ここまでが、予備知識で、↓ここからが見田氏の見解です。

 見田氏は、テンニースの示した非打算的社会=ゲマインシャフトと、実利的社会=ゲゼルシャフトの区分けを採用せず、むしろ、ひな形として扱い、前者を共同態、後者を社会態として扱いました。
 そして、もうひとつ意思の有無(濃淡)の軸を設けて、4つの社会構造を提示して、現代の様々な社会状態を網羅する分類を示しました。


 見田氏の言葉を用いれば

1. 意思的な共同態   ... 交響体 ... 意識や意思によって人格的に繋がる集団
2. 意思以前的な共同態 ... 共同体 ... 地縁、血縁、友情によって人格的に繋がる集団(家族、同僚、農村共同体)
3. 意思的な社会態   ... 連合体 ... 相互利益とそれらを維持する秩序を構築して集う集団(会社、団体)
4. 意思以前的な社会態 ... 集列体 ... 相互利益に生きる人々の相補的に繋がる社会(損得勘定を基にした集い)

の分類です。さて、この4つの分類、なにがそんなに面白いのでしょうか。

  一つは、先述した、哲学の文脈上にある、物事に血を通わせる直観などの価値とその価値を共有しようとする集団が、意思のある共同態(非打算的)、見田氏の言うところの、交響体の集団に反映されている点です。

 なんだか、面白そうですね。

1.2の共同態=ゲマインシャフト
3.4の社会態=ゲゼルシャフト

 明日夜、また続きを描くことにして、ひとまず、今日はここまでにしたいと思います。
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6/3追記

 交響体は、解りづらいかもしれず、捕捉すると良いと思ったので書きます。

 交響体というのは、見田氏のいう「意思」的な共同態です。共同態とは、ゲマインシャフトを基にする集団で意味するところは、地縁・血縁など、「本質意志」で繋がる集団でした。
 なので、交響体とは、構成員の「本質意志」の「意思」によって関係が生まれる集団です。この集団は自発的に行動する、という特徴があります。

 ところで、これは、すごく不思議な特徴があります。この点に触れて、捕捉を終わります。

 というのは、多くの場合、趣味の集いやある意識の繋がりから交響体が形成されても、体制の維持が難しいという特徴があるからです。

 なぜなら、仮に交響体が形成されても、成員同士は、物理的な身近さによって生じる縁etc.の集団=共同体に変容しやすいですし、組織を運営するために権力構造を有する集団=連合体(相互利益に基づく関係性)に、変容しやすいからです。

 交響体の成員は、うまく形容し難い、研究者や芸術家や、よほどの脳天気な面白い人々など、利益ではない繋がりを発見する自発的で、ある意味不思議な集団ということになりそうです。
 ちなみに、テンニースは、Gekehrten=Republik(学者共和国)という領域を、構想しました。

 という訳で、雑駁ながら、上記が交響体の捕捉でした。

 一方、集列体や、連合体の違いなども、解りづらいかもしれないので、それもまた説明できると嬉しいです。見田氏は、共同体も交響体も、集列体や連合体に含まれるとバランスが良い、との旨を記しており、現にそのようにシステムを社会は作り出しているそうです。

 ところで、徐々に、まぶたが重くなってきました。本日はバスケの試合で久々に良い汗をかいたため、その分、ゆっくり休みたいと思います。お目汚し失礼致しました。

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

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ゲマインシャフトとゲゼルシャフト―純粋社会学の基本概念〈上〉 (岩波文庫)

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